「お前、朝までゲームするとか、どんな神経してんだよ」
兄の栄太が言った。
「いいじゃん、三連休なんだし」
弟の某助が言った。
「全く、生活リズムを崩した生活するなよ」
「おやすみ」
「崩れまくってるな」
栄太はそう言って、朝ごはんを食べながらテレビを見ていた。
「今日は秋分の日か」
「そうです、今日は秋分の日です。昼夜の長さが等しくなります。春分の日までは夜が昼より長くなります。いえーい!!」
「このアナウンサー大丈夫か?」
栄太は友達と遊び、楽しんだ。
そして日が暮れ始めて、帰ってきた。
「ただいまー」
「zzz…」
「某助、まさか寝てるのか!?」
「お、おはよう」
「おい! もう夕方の5時だぞ!」
「5時か……。あーっ!」
「どうした!」
「今日……友達と遊ぶ予定があったんだった」
「あーあ。ゲームで無駄にしたな」
「ちょっと……、電話しないと!」
しかし、友達は電話に出なかった。
「ちょっと待ち合わせ場所に行って謝ってくる!!」
某助は走った。
しかしそこに友達はいなかった。
「自分は……自分で今日という一日を棒に振ってしまった。
今日と言う日は今日しかないのに……」
某助は近くの河川敷に座り込んだ。
そして、遠くに沈む太陽を静かに見ていた。
「日が暮れる……」
太陽はゆっくりと地平線へと沈んでいく。
「なんでもないこんな一日を。
こんな一日を後悔する日が来るかもな」
そして、太陽は地平線に全て沈んでいった。
「日が暮れた……」
するといきなり風が吹いてきた。
強い風だ。
そして、明るくなってきた。
なぜだ。
日が東の空から昇ってきた。
夜を迎えずに、また一日が始まったのか。
謎を抱えて家に帰った。
「今日は秋分の日です」
家に帰って分かったことは、なぜかもう一度秋分の日がやってきたということだ。
これでやり直せる。
これで、友達との約束を破らずにいることが出来る。
某助は待ち合わせ場所で待った。
しかし、いくら待っても友達は来なかった。
なぜだ。
なぜ来ないのか。
やり直したのに。
ついに友達は来なかった。
家に帰ると、栄太が言った。
「お前、携帯忘れて行ったぞ。そして友達からめちゃくちゃメールが来てたぞ」
「え?」
二人の待ち合わせ場所に差異があった。
某助は勘違いして本来の待ち合わせ場所とは違うところで待っていた。
それを友達はメールで伝えようとした。
しかし、そのメールは某助には届かなかった。
ただそこに待っているだけになっていた。
友達と遊ぶという本来の目的を忘れてしまっていた。
やけくそになっていた。
絶対にここに来ると思い込んでいた。
某助は悲しみに暮れ、再び河川敷に座った。
「結局、同じことの繰り返しか……」
そう、同じことの繰り返しなのだ。
再び風が吹いてきた。
再び日が東から昇ってきた。
再び秋分の日がやってきたのだ。
「今日は秋分の日です」
同じことの繰り返しだった。
そこから脱却するために某助はメールでしっかり確認した。
しかし、某助は遊ぶことなど既にどうでも良くなってきた。
待ち合わせに遅れないように、と緊張していた。
「じゃあ、俺も遊びに行ってくるから」
栄太が話しかけてきて、玄関のドアを閉めた。
それと同時に緊張の糸が切れた。
某助は泥のように眠り込んでいた。
栄太がそんな某助を起こした。
気づけば、5時だった。
そしてその時計を見た瞬間に、某助の頭の中の何かが弾け飛んだ。
ぐるぐるしてきた。
某助の目が回る。
気づいたときには河川敷に座っていた。
綺麗な夕暮れだった。
また風が吹いてきた。
強い風だ。
「もういい!」
某助は言った。
「今日と言う日は今日しかない!
でもそれでいい!
後悔するかもしれないが、
それでこそ一日一日を大切に過ごすのだから!」
ハッと気がついたときには某助は部屋の中にいた。
もう夜だった。
今までのことは夢だったのか。
現実だったのか。
分からない。
ただ分かっているのは、明日からまた新しい一日が始まるということだ。
そしてその一日を大切に過ごすということだ。
新しい、大切な一日を。