深夜ラジオを聞いていると、いつの間にか朝になっていた。
朝焼け。
雲がかかっている。
朝の町に誘われ、ふと外に出る。
風が涼しい。
まだ眠っている町を歩く。
清々しい気持ちだ。
「また落ちた……」
司法試験に落ちたのは3回目。
そろそろ違う道を歩みださないといけない。
そうは思っても、いつもと同じ日々を繰り返す。
定まらない将来。
ここにこんな道あったっけ。
ふと入ってみる。
裏道には居酒屋が立ち並んでいた。
おじさんと目が合った。
おじさんはぎょっとして、戸を開けた。
「おめぇ……」
「大丈夫です」
「大丈夫じゃなかぁ……」
「違う道を歩むんです。止めないでください」
「おめ、正気か? ……まぁ俺は止めねぇよ」
「大丈夫だって」
そう友人は言ってくれる。
大丈夫じゃないことなんて、自分が一番分かっている。
友人は2年前に司法試験に受かった。
自分は未だ受かっていない。
差が広がっていく。
それを感じながらも、無理にでも笑おうとする。
笑うしかない。
道を抜ける。
人がたくさんいる。
笑われている気もするし、引かれている気もする。
でも、いいのだ。
惨めになるなら、とことんならないと。
「司法試験受かったらどうするんだ?」
「弁護士になろうかと」
「……本当になりたいのか?」
「……」
「本当はもっと、違うことがやりたいんじゃないのか?」
「……」
「自分の心を裸にしろ。話はそこからだ。今からでも引き返せる」
「……」
パトカーのサイレンが聞こえる。
音が近づいてきて、パトカーが目の前に止まる。
警官がパトカーから出てくる。
「君ぃ、困るよ」
手錠を片手に警官が自分に近寄る。
「どうして君は全裸なんだね?」
新しい1日が始まろうとしていた。