Sleeperのブログ

ネットの奥深くに眠るブログ。。。

0619 桃太郎(動物視点)

【Sleeper追記】鬱展開注意です。苦手な人はブラウザバックしてください。画像などは一切ないので、そこんところはご安心ください。

 

犬視点

昔むかし、あるところに家族と1匹の犬が住んでいました。

犬は「もっと広い世界を見てみたい」ということで、家出をしました。

 

家から3里離れたところで、桃太郎とかいう少年に出会いました。

彼の目は虚ろでした。

 

「このきび団子、一つあげるよ」

彼がそう言ったので、犬は何の迷いもなく食べました。

 

すると、急に桃太郎が大きな存在に見えてきました。

「一緒に鬼ヶ島に行って鬼を退治しよう」

この人の命令は絶対なんだ、という風に思えてきました。

 

サルやキジとも合流し、小舟に乗り、鬼ヶ島に行きました。

鬼ヶ島には鬼がたくさんいましたが、桃太郎の指示に従えば間違いありませんでした。

無事に鬼を退治し、桃太郎と一緒に凱旋をしました。

 

桃太郎が帰宅したのち、何か憑き物が落ちたように「家に帰らなきゃ」という気持ちになりました。家族が待っています。

そして3里を駆け足で戻り、犬は無事家にたどり着くことができました。

家族は飼い犬が帰ってきて安心しました。

 

そしてそれから犬は家出をすることは無くなり、家族とともに楽しく生活しましたとさ。

めでたしめでたし。

 

サル視点

昔むかし、ある山にサルの群れが生活してました。

その群れに飽き飽きしていたサルが一匹いました。

別のサルがそのサルに話しかけました。

 

「お前、こんな端っこで何やってるんだよ」

「サルに飽き飽きしてるんだよ」

「お前サルだろ」

「見てみろ。サルなんてバカだしブスだし、魅力的な女もいない」

「どれだけお前は人間の女が好きなんだよ」

「大好きさ。ああ、今日も集落に下りて人間の女を観察しようかな」

「勝手にしろ」

 

そう言われたサルは、山を下りて集落にやってきました。

「女いねーかなー」

このサルは、人間の女を見かけてはいやらしいことをする、いわゆるエロ猿でした。

 

しかし、いつまで経っても女が見つかりません。

「さすがに腹減ってきたな、帰るか」

 

そこに、犬を連れた少年がやってきました。

「君、きび団子をあげるから旅のお供になってくれないか」

少年と犬の目は何か変でした。

 

サルは腹が減っていたのできび団子を半分かじりましたが、危険を察知し、残りの半分は食べませんでした。

そう、このきび団子には催眠効果があるのです。

おじいさんとおばあさんは鬼ヶ島の金銀や財宝を確実に得るために、まずは桃太郎を洗脳しました。

そして洗脳した桃太郎に、催眠効果のあるきび団子を与えました。

このきび団子を食べた者は、忠誠心が湧き上がり、桃太郎の命令に絶対に従ってしまうのです。

 

半分だけ食べてしまったサルは、中途半端に催眠にかかってしまいました。

 

「おれやだよ行きたくないよ」

と言いながらも、体は鬼ヶ島へと向かってしまいます。

キジと合流し、小舟に乗って鬼ヶ島に着きました。

 

鬼ヶ島にいた鬼は、ツノが生えている以外は人間そっくりでした。

鬼の中には、女や子どももいました。

サルは女に興奮しましたが、次の瞬間女に噛みついていました。

体が言うことを聞きません。

「やめろ!噛みつきたくない!止めてくれ!!」

しかしサルは女を噛み続けました。

「痛い」

女はそう言って血を流しながら倒れました。

「サル、よくやったぞ!」

桃太郎の声が遠くから聞こえます。

 

ここからの鬼ヶ島での記憶はサルにはありません。

気が付いたら元の山に帰っていました。

そのときにはもう、人間が大嫌いになってしまいました。

 

そしてサルはサルだけで楽しく生活しましたとさ。

めでたしめでたし。

 

キジ視点

昔むかし、鬼ヶ島に鬼たちが楽しく生活していました。

「我ら鬼族は少数民族だ。だから差別され、島に住むようになった。しかし、ここでの生活も悪くない。毎日を楽しく生きることが大事なんだって気づかされたよ」

ある1人の鬼はそう語りました。

しかし、それほど温厚な鬼ばかりではありませんでした。

「どうして人間共に屈しなきゃならないんだ。俺は戦うぞ。いつか鬼族が普通に生活できるようにな」

その鬼は、ときどき人間の村に行って悪さをしていました。そのため、人間と鬼族の関係は段々と悪くなっていきました。

 

鬼ヶ島には鬼だけでなく、様々な動物もいました。

その1つがキジです。

ある男の鬼がキジにこう言いました。

「キジやキジ、人間の村に行って不審な行動をしている者がいないか見回りにいっておくれ。帰ってきたらご褒美にトウモロコシをあげるよ」

そう言われたキジは、さっそく人間の村に行きました。

 

すると何やら不審な恰好をした少年と、犬とサルがいました。

近づくと、少年に

「君も旅のお供にならないか。きび団子をあげるから」

と言われました。

キジは彼らが今から何をするのか気になりました。

それを観察するためにお供になった方がいいのではないか、とキジは考えました。

 

この判断が大きな間違いでした。

 

きび団子を食べた瞬間に、キジは催眠状態に陥ってしまいました。

心も体も支配されたキジは、もう後戻りできませんでした。

 

キジは小舟には乗らず、小舟の前を飛んでいました。

鬼ヶ島の入口の門は閉まっています。

鬼ヶ島は他者の侵入を防ぐために、戸締りを厳重にしているのです。

しかし、キジが「ケーン」と鳴いてしまいます。

鬼ヶ島では、キジがいつでも帰ってこられるように、「ケーン」と鳴いたら門を開ける決まりになっているのです。

門を開けたら、そこにいるのは鬼ヶ島のキジと、よそ者の人間と犬とサル。

 

「乗り込め!」

桃太郎は鬼ヶ島に乗り込みました。

ここから後は惨憺たるものでした。

 

桃太郎たちは、女子供を重点的に殺していきました。

キジは目をつつくことで、多くの鬼を失明させました。

そして、ある男の鬼をつついたときに、なぜだか胸が痛みました。

トウモロコシの香りがキジの体中を駆け巡ります。

 

桃太郎が金銀財宝を得たときには、鬼ヶ島の鬼は殺されたか、失明していました。

ある鬼が言いました。

「俺の愛する人、子どもをどうした、言え、言うんだ」

桃太郎は淡々とした口調で言いました。

「女子供は一人残らず殺しました」

それを聞いた鬼たちは泣きわめきました。

桃太郎の高笑いが鬼ヶ島に響き渡りました。

 

桃太郎が家に帰ったとき、キジの催眠は解けました。

そして全てが鮮明に蘇ってきました。

自分がしてしまったこと。

血まみれの鬼ヶ島の光景。

トウモロコシの香り。

全てがキジを苦しめました。

キジは三日三晩泣きました。

 

三日経ったのち、自分のしたことの責任を取らねばならないと思い、キジは鬼ヶ島に戻りました。

ケーン」と鳴く前に門は開いていました。

すると、キジが思っていた以上に酷い光景が広がっていました。

思い出の場所が血の色に染められています。

知り合いの鬼たちもすっかり冷たくなっています。

呆然として、キジは泣くことさえできませんでした。

生き残った鬼を探しても、全然見つかりません。

 

長い時間探して、ようやく一人の鬼が見つかりました。

人間の村で悪さをしていた鬼です。

その鬼もまた、失明していました。

キジは「ケーン」と鳴きました。

 

「おお、キジか」

 

そしてしばらく間が開いて鬼はこう言いました。

「全て俺の責任だ。

 

俺が悪いんだ。俺は人間が憎くて憎くてたまらなかった。

しかし、だからと言って人間の村で悪さを働くのはあまりに身勝手だった。

俺は間違った道を歩んでしまった。

ただ、俺は普通の生活がしたかっただけなんだ。

言葉じゃ相手にしてもらえないから行動で示しただけなんだ。

そして、そのせいで皆死んだ。

 

どう償えばいい。

なんて謝ればいい。

許されなくていい。

一生嫌ってくれて構わない。

どうすれば、鬼ヶ島の連中は帰ってくるんだ。

 

 

ちなみに、俺以外の鬼は全員死んだ。

女子供は殺された。

男連中は絶望し、自ら命を絶った。

俺は自ら命を絶つことが出来なかった。

自分で勝手に命を絶ったら、女子供に何の顔向けもできないからな。

 

キジ、お前は悪くないからな。

自分を責めないでくれ」

 

キジはその男の言葉に少し救われました。

 

その男とキジは、多くの死体とともに鬼ヶ島に居続けました。

やがて、そのどちらも飢え死にしてしまいました。

 

そして、キジや鬼たちは天国で仲良く暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。