Sleeperのブログ

ネットの奥深くに眠るブログ。。。

誰かの手が、ほら

俺は拓也。中学二年生だ。
この前、「心霊スポットに行こう」と、友達の正人に誘われた。
断る理由もないので、行くことにした。

夜7時。今日は用事で両親がいないことをいい事に、夜遅くに外出した。
玄関を出たら、正人が待っていた。

「よう、拓也」
「お、おう、正人。一眼レフを持ってきたのか?」
「そうだ。デジカメじゃ写らないかもしれないからな」
「そんな幽霊が媒体にこだわるかなぁ」
「さあね。ちょっとまだ慣れてないからちょっと今からお前のこと撮るわ」
パシャッ
「うわ、待てよ、焦った~。フラッシュを焚くなよ~」
「だって、夜だから焚かなきゃ写らないだろ」
「そりゃそうだけどさ。で、その心霊スポットってどこなんだよ」
「ずっと向こうの公園さ。自転車に乗って来い」
「分かった分かった」

そう言って、俺たちはその公園へと向かった。

しばらくして、そのとある公園に着いた。

「この公園はマジでやばいぞ」
正人がそう言った。あまり心霊に興味はなかったが、さすがに少し怖くなってきた。
「このブランコだ」
そこには二つのブランコが横に並んでいた。
「そこの右側のブランコに座ると……」
「座ると?」
「左側に小さな女の子が乗ってるという……」
「まじか……」
そのブランコは街頭に照らされて、不自然に明るくなっている。
「正人、座れよ。言いだしっぺだろ」
「いや、俺が座ったら撮れないだろ。一眼レフだぞ」
「いいから座れよ!」
俺は半ギレ状態だった。わざわざ難しいカメラを持ってきて、俺を撮るように、たくらんでいたんだ。不公平だ。言いだしっぺが撮られるべきだ。心霊写真で何か起こってしまうのは、撮るほうではなく、撮られるほうと、相場が決まっている。

パシャッ

「あとで家で確認しような」
「お、おう……」
正人の元気が明らかに無くなっていた。

もしかして幽霊にとりつかれているのかもしれない。
いい気味だ。俺を騙そうとしたんだ。
再び怒りが込み上げ、不意打ちで正人を写真に撮った。

パシャッ

「やめろよ!」
「さっき同じことしたくせに」
「いきなり撮るなんて! この辺に何かあったらどうする……」
「どうした?」
「これ、墓石じゃねぇか?」
「え、まじで」
「おい、お前何してくれてんだよ」
「ごめん。でも、お前、心霊写真を撮りたかったんだろ?」
「まあ、そうだけど……」
「撮るのは良くて、撮られるのはダメってか。自分勝手だな」
「ごめん」
「まあ、別にいいけどさ。とりあえず、家に帰って写真を見てみようぜ」
自分の一言一言が正人を追い込んでいることには気づいていた。
これで、正人と心霊とのツーショットが撮れていれば、もうこのようなことはしないだろう。そうなることを願っている。


「よし、写真を振り返ろうぜ」
俺は淡々と作業を進めていた。

まず、一番最後に撮った、墓石とのツーショットを確認してみた。
「あーっ!」
「なんだよ、拓也!」
「これ、手じゃない!?」
「なんだよ……違うよこれ、俺の手がぶれただけだよ」
俺は少しガッカリしたが、少し安心した。


その前に撮ったブランコの写真も見てみた。
「なーんにも写ってないな」
正人が言った。
「あーあ、なんか馬鹿らしくなってきたなー。さっき怒ってごめん」
「いいよ」
「帰るか」
「ちょっと待って!!」

そう言った瞬間、正人の顔がみるみる青くなっていった。
「おいおい、なんだよ」
「手が、手が!」
「だから、それはお前の手だったんだろ」
「見て!」
「なんだよ、全く……」


俺の家の玄関と、俺一人が写った写真だった。


写真の下の方に、無数の手が写っていた。
地面から、うじゃうじゃ生えていた。
何本かの手は俺の脚を掴んでいた。
ところどころ、血まみれの顔が地面から出ていた。
地面に引きずり込もうとしているようだった。

 

俺は帰れなくなってしまった。

帰ったらあの手に掴まれて、二度と帰れなくなってしまいそうで。