眩しくて、目が覚めた。
目を開くと、真っ白な世界がそこには広がっていた。
「夢か」
そう、夢のはずだ。
俺は部屋で寝ていたのだから。
その白い世界にポツンと置かれたベッドに再び寝た。
しかし眠れない。
それはそうだ、眩しいからだ。
早くこの夢、終わってくれないかなぁ…。
「残念ながらそれは無理だ」
何か声が聞こえた。
振り向くともう一人の自分がいた。
まぁ、夢だから何でもありなのだろう。
「残念ながら夢ではない」
自分が自分に話しかけてきた。
「はいはい」
適当に相槌を打った。
「最近、お前は疲れたとしか言っていない。俺は知っている」
「だって本当に疲れてるんだもの」
最近は働きづめの毎日で、本当に疲れている。
「ならば、君は休んでいてくれ。俺が代わろう」
「え?」
そう言うと、もう一人の自分はベッドに寝て、そのままグーグーと寝てしまった。
どういうことだ?
周りを見渡してみると、遠くのほうに違うベッドがある。
見に行くと、自分がグーグー寝ていた。
さらに別のベッドでも、自分がグーグー寝ていた。
辛そうに寝ている自分もいたり。
壊れたベッドもあったり。
随分と奇妙な夢だ。
早く夢から覚めないか?
「あーっ、見つけましたよ!」
遠くから何か声が聞こえた。
「ダメじゃないですか! いくら生きたいとしても天国から抜け出して平行世界に行こうとするなんて! たとえ同じ自分でも人生を入れ替えようなんてことをしてはいけませんよ! ほら! あの門をくぐって全部記憶を消しますよ!」
「あなたは誰ですか?」
「天使に決まってんでしょ! ほら行きますよ!」
すぐに巨大な門が近づいてきた。
「えっ、俺は死んだんで…」
身代わりに天国に行ってもらったやつには感謝したい。
不運な事故で死んだ俺が、平行世界(パラレルワールド)で別の人生を歩んできた自分と入れ替わることが出来るなんて。
しかし、あいつは何であんなに寝苦しそうにしていたのだろう。
俺はこのベッドでも全然寝られるのに。
今まで寝てたベッドだって壊れさえしなければずっと寝られたのに。
俺はもう一度生きるんだ。
現実という夢を。