Sleeperのブログ

ネットの奥深くに眠るブログ。。。

冒険日和

「今日は冒険日和だなぁ」

「は?」

兄の栄太は話を進めた。

「今日は冒険がしたくてたまらないな」

「は?」

弟の某助は兄の言っている意味が分からなかった。

「何か胸躍るような冒険は無いものかね」

「何、この話は今から冒険するっていう話なのね?」

「メタ発言はやめろよ、某助」

「はっ、つい我慢できずにメタ発言をしてしまった」

「全く、次から気をつけろよ」

栄太が家の部屋のドアを開けた。

そこには荒涼とした砂漠が広がっていた。

「ほら、某助見てみろよ、冒険の舞台が広がっているぞ」

「は? なんで?」

「ふっふっふ」

「いや、ここは家の廊下につながるはずだろ?」

「日常世界ならそうなるはずだろう?」

「うん」

「でも、ここは小説の世界だから、何でもありなんだよ!」

「メタ発言やめろって言ったのは誰だよ」

「日常生活では不自然なことも、小説の世界だから問題なし!」

「あとでお前、色々な小説家からタコ殴りにされるぞ」

「大丈夫、コメディ小説だから」

「コメディ小説なめんじゃねぇよ」

「とりあえず冒険しようぜ」

栄太がこう言うと、某助が心配そうな顔で、

「行くあてが無いよ」

と言った。

「大丈夫だ、地図持ってるから」

「なんでお前が持ってるんだよ」

「小説だから」

「そんな理由二度と口にするんじゃねぇぞ」

こうして言い争いが止まない中、二人は砂漠を歩いていった。栄太が大人の事情で手に入れた地図を片手に、某助を案内していた。

「まず、最初に武器屋の主人に会うんだ」

「なるほど」

「そこで、ドラゴンを倒すために武器を買って」

「ドラゴンを倒すのか?」

「ドラゴン倒すでしょ?」

「なんで?」

「そこにいるから倒すんでしょ」

「はい、無意味な殺しは生態系を破壊する事につながるのでやめた方がいいと思います」

「なーに言ってんだか、ドラゴンが怖いだけだろ」

「さすが我が兄、その通りです」

「はっはっは。ドラゴンなんて武器さえあれば怖くないよ」

ガオーーーーーーーーー

急にドラゴンが現れた!!

「「ギャァーーーーー!!」」

そこら辺にあった建物に二人は飛び込んだ。

「あー怖かった」

「結局栄太も怖がってるじゃん」

「いいや、某助ほどは怖がってないはずだ」

「ところで、栄太、ここはどこ?」

「ここは・・・」

「いらっしゃい」

白髪の老人が急に挨拶してきた。

「ハ、ハロー・・・・・・」

「某助、怖がるな。ここは武器屋だ」

「お二人さん、いらっしゃい」

「は、はい」

「じっとしなさい」

「は、はい」

すると白髪の老人は、杖を取り出して、二人に呪文を放った。

「アトツギ・マカセター!!」

杖からは青い光が出た。

二人はひどく驚いた様子で、

「こ、これはなんですか!」

と言った。

「お二人さん」

「はい」

「今日からは君たちがこの店の主人になるんじゃ」

「はい?」

「この店を営む責任を、今の呪文で君たちに押し付けた。君たちはもうこの店から出ることは出来ない」

「は、どうするんですか、この店を営みたくないんですけど」

「うるせぇ!」

「ええっ」

白髪の老人は走って店を飛び出た。

「わしは自由じゃぁーーーーーーーっ!!」

 

二人は武器屋の主人を任せられた。

しかし、まだ二人はそのことを理解しきれなかった。二人が困惑しているうちに、ある一人の客が来た。

「こんにちは、俺はヌーカです」

「くっさ」

「はい?」

「いや、なんでもありません。いらっしゃいませ」

栄太がとりあえず接客をすることになった。

しかしこのまま武器屋にいるわけにもいかないので、某助は呪文の解き方を調べるために、2階に置いてあった様々な本を読みあさった。

「いや・・・くさい・・・」

「はい?」

「いや、なんでもありません。何が欲しいですか?」

ヌーカからは激臭がしていた。

「えーと、オススメの武器をください」

自分たちも後々ドラゴンを倒すことになるだろうから、あまり強い武器は売りたくない。

「綿で出来た剣とかいかがでしょうか」

「綿? 弱そう」

「強いか弱いかなんて私は知ったこっちゃないですし、関係ないです」

「だいぶ適当ですね。これはいくらですか?」

「逆にいくらで買いたいですか?」

「タダで欲しい」

「もってけドロボー!」

「まじか! やったー!」

ヌーカは大変喜んでいる様子だった。

「良かったね~、くっさ・・・」

「はい?」

「いや、なんでも。他に用は?」

「ドラゴンの弱点を教えてください」

「えー、わかんないですけど、鼻の穴とか攻めてみたらいいんじゃないすかね」

「適当ですね」

「いや、だって分かんないんですもん」

「そうですか。信じてみます」

「信じるの!?」

ゲーテさん、ありがとうございます。私、絶対ドラゴンを倒してやります!」

「頑張れ。俺ゲーテじゃないけど」

「栄太、どんな感じー?」

2階から降りてきた某助が栄太に聞いた。

「あそこに置いてある弱そうな綿の剣を、タダで押し付けた」

「武器屋の主人、なんでもありだな」

 

また客が来た。

今度はカップルのようだ。

「こんにちはー」

リア充は滅べぇ!!」

「はい?」

「いや、なんでもありません。いらっしゃいませ」

つい心の声が出てしまったようだ。ちなみに栄太は年齢イコール彼女いない歴である。

「プー、どれを買う~?」

「そうだね、ペーコ、僕は君の心を買いたいよ」

「いやだ、またそうやって私の心を射止めようとしてるんでしょ~、私の心はそう簡単に売らないわよ!」

「ペーコ、愛してるよ」

「・・・売る!」

「滅べ滅べ滅べ・・・いや、どれを買いますか? ていうか私のオススメは綿の剣なんですよね。今ならタダであげます」

「じゃ、ペーコ、それにしようかね?」

「私はどこまでもついていくわ!」

「あ、あとゲーテさん、ドラゴンの弱点はどこですか?」

「鼻の穴です。まぁ私ゲーテじゃないからよく分からないんですけど」

「分かりました! プーも頑張ろうね!」

「この戦いが終わったら、私たち結婚しよう」

「お二人さん、地味にフラグ立てちゃってますけど」

「この戦いが終わったらね。絶対負けない。絶対に生きて結婚するから!」

栄太は今のカップルの雰囲気に耐え切れず、2階に上がってきた。

「どうした、栄太?」

「今の客、すげーリア充だった」

「栄太は心が狭い陰キャだからリア充を見てイライラするんだよな」

「正論やめろ」

 

栄太は正論を言われてむかついたので再び1階に戻った。また客が来た。

「こんにちは、僕の名前は、ああああです」

「適当な名前だな」

「ドラゴン倒すための武器ください」

「どんだけドラゴンいるんだよ・・・・・・」

「いや、ドラゴンは1匹なんですけど、そのドラゴンが強いんで、数人がかりで倒さなくちゃいけないんですよね」

「へー、そーなんだ」

「ていうか僕についてきてくれませんか。怖いです」

「怖いからついて来て、だと・・・・・・?」

ああああは、いかにも弱そうで一緒に行くとしても足手まといになりそうだった。

しかし、栄太は呪文の効果で店から出られなくなっているため、一緒に行くことは出来ない。

「あのさ、俺たちゲーテのせいで店から出られないんだよねー」

栄太は断る理由があってほっとした。

いきなり2階から階段を駆け下りる足音が聞こえた。

「栄太! 呪文を解く呪文が分かったぞ!」

「お前、今見つけるんじゃねーよ!」

某助がタイミング悪く、呪文を解く呪文を見つけてしまったようだ。

「栄太! 今から呪文をかけて呪文を解く! 目をつぶれ!」

某助は武器屋にあった杖を取って、呪文を言い放った。

「ヤ!」

杖から金色の光が出て、栄太を包み込んだ。

「これで呪文が解けたはずだ」

「ずいぶんと簡単な呪文だな」

「栄太、俺にもかけてくれ」

「ヤ!」

杖から金色の光が出て、某助を包み込んだ。

「これでオーケーだな」

「ついて来てくれるんですね! ありがとうございます!」

栄太は断るに断れなくなった。

「・・・・・・じゃ、一緒に行こうや、ああああ」

「はい!」

こうして、ああああと栄太と某助、3人でドラゴンを倒す事になった。

「栄太、何か強い武器持ってこうぜ。どの剣使う?」

「じゃあ俺たちマシンガン持って行こうぜ。はい、ああああの分」

「ありがとうございます!」

栄太がマシンガンを店から持ってきた。

「ドラゴンにマシンガンって。普通は剣とか使うだろ」

「マシンガンに剣は勝てますか!? ええ!?」

「はいはい。あと盾とかはどうする」

塹壕掘るだろ」

「じゃあお前一人で塹壕掘ってろ」

2人の言い争いは止まらなかった。歩いている途中にカップルのような声が聞こえた。

「悪い予感がする」

栄太の予感は的中した。

「あー、ゲーテさん!」

「俺ゲーテじゃないんだよなぁ」

プーとペーコに出会った。

「栄太、これさっきの客?」

「そうだよ」

「プー、仲間が増えたよ!」

「そうだね。だけど俺はどれだけ仲間が増えてもペーコのことを愛し続けるよ」

「滅べ滅べ・・・・・・」

「心狭い陰キャリア充を妬んでるわ、哀れ」

「某助、少しは黙ってろ」

「はいはい。ていうか、ああああは?」

ああああは歩くのが遅かった。

「おーい、ああああ! 先を急ぐぞー!」

「は~い!」

しばらくすると、激臭がしてきた。

「何だこの匂い!」

「某助は知らないだろうが、さっき来た客の匂いだ」

「プー、何か臭いんだけど~!」

「俺が守ってやるよ、ペーコ」

予想は的中し、ヌーカに出会った。

「あ、ゲーテさんじゃないですか」

「俺、ゲーテじゃないし、くせ・・・」

「はい?」

「なんでもありません」

「他にもたくさんの人がいますね」

「順に自己紹介してくわ。俺は栄太。ゲーテじゃないよ」

「俺は某助」

「俺はペーコの恋人、プー」

「私はプーの恋人、ペーコ」

「4人ですね。よろしくお願いします」

「ああああはどこだ!」

遠く離れたところにああああが見える。

ゲーテさん、すみませーん」

「早く来いよー」

「5人ですか。じゃあ私含め6人ですね」

そんなこんなで6人でドラゴンを退治することになった。「ゲーテさん、ドラゴンの弱点は鼻の穴ですよね!」

「あ、あぁ・・・・・・」

適当に答えたとは言えない栄太。

「は、栄太、そうなの?」

某助が栄太に本音を聞いた。

「・・・そうだよ、弱点は鼻の穴だよ」

栄太はでまかせを本当だと言ってしまった。

どうやら彼は後に引けなくなってしまったようだ。

「僕、決死の覚悟で鼻の穴攻めます!」

「私たちも鼻の穴攻めようね!」

「ああ、ペーコと一緒にいればどこも怖くない」

「じゃあ俺も攻めます」

「でもドラゴンの鼻の穴って自分より高い位置にありますよね」

栄太がさらに問い詰められた。

「・・・・・・寝てるところを狙えばいいんじゃないかね」

また適当なことを言った。

「あ、ドラゴン寝てる!」

ついにドラゴンと対面した。

「本当に寝ちゃってるし・・・・・・」

「なぁ、栄太。本当に鼻の穴か? さっきから挙動がおかしいけど」

「・・・・・・本当だ」

「そうなのか」

「僕、頑張ります!」

「この綿の剣で鼻の穴を攻めまくるわよ!」

「俺も頑張るよ。綿の剣だよな」

某助はどんどん心配になっていく。

「なんでこんな弱い武器ばかり売っちゃったんだよ」

「強い武器を独りじめできると思って・・・・・・。まさかこいつらが仲間になるなんて思わなかったんだ・・・・・・」

「もう、僕攻めて良いですか!?」

「私も攻めたい!」

「おい栄太。これが本当の弱点じゃなかったら、命が無駄になるかもしれないぞ」

その言葉に栄太はゾクゾクした。

本当のことを言う決心がついた。

今ならまだ間に合う。

そう栄太は思い、このことは嘘だということを告白することに決めた。

「じつは鼻の穴が弱点だなんて、」

「「「「かかれぇーーーーーーーーーーっ!!!!!」」」」

「やめろぉーーーーーーーーーっ!!!!!」

言い出したときには遅かった。

ついに戦いが始まった。まず、ヌーカは左、プーとペーコは右の、鼻の穴の奥深くに入って綿の剣を押し付けた。

当然、綿で出来ているので刺さることはない。

マシンガン勢は遠くで待機していた。

鼻の穴にいる前線部隊を撃たないようにするためだ。

しばらくは、特に動きの無い地味な戦いだった。

「俺たち何すればいいんだろ」

「知らね」

栄太は投げやりになっていた。

ただ、段々ドラゴンがむず痒そうな顔をし始めた。

綿の剣の攻撃が効いているようだ。

「ハ・・・ハ・・・」

ドラゴンがくしゃみをしそうになってきた。

「まずい、3人とも鼻の外へ逃げろ!!」

「プー、逃げるよ!!」

「俺はペーコを全力で守るっ!」

プーとペーコが鼻の穴から出てきた。

しかしヌーカが未だに鼻の穴の中にいる。

「ヌーカ、早く出てこーーい!!」

するといきなりドラゴンの頭が持ち上がった。

「ファーーーークショーーーーーン!!」

ドラゴンは炎を吐きながらくしゃみをした。

「やばい! ヌーカが鼻の中にいるのに!」

「いいからマシンガンでドラゴンを撃つんだ!!」

「・・・・・・?」

「・・・・・・これ撃てないな」

ゲーテさん! これ弾入ってません!」

「弾が別売りだったとは・・・・・・」

「栄太ぁーーーーーーっ!!」

「弾がぁっ! 弾がなぁい!」

「ヌーカはどうするんだ!」

「今助けるから待って・・・・・・あれ?」

ドラゴンの頭が下がってきた。

いや、下がっているというより落ちているようだ。

ドスンと大きな音を立ててドラゴンの頭は下がった。

ドラゴンは舌を出したまま動かない。

どうやらドラゴンは気絶しているようだ。

ヌーカが鼻の穴から出てきた。

「ヌーカ、大丈夫か!」

「大丈夫だ!」

ヌーカは無事だったようだ。全員が無事であることを確認した。

「良かった・・・・・・」

栄太は心からほっとした。

「じゃあ、俺が『攻撃しなくなる薬』をつけるわ」

「何それ?」

栄太がプーに聞いた。

「ドラゴンを殺すことは生態系の破壊につながるから、人間に攻撃しないようにするだけでいいんだ。ただ、これは舌に塗らないといけないから、気絶させる必要があったんだ」

「あ、殺しちゃだめなの」

「ほら、栄太。生態系の破壊につながるんだよ、最初に言っただろ」

「うるせぇなぁ・・・・・・」

栄太はイライラするも、反論が出てこなかった。

「ペーコ、俺がこの薬をつけてくるよ」

「プー、頑張って!」

プーはおもむろに薬を取り出し、ドラゴンの舌にその薬を塗りたくった。

「よし、これで攻撃しなくなる」

「きゃー、プー大好き」

「俺も大好きだよ、ペーコ結婚しよう」

「本当に? ありがとう!」

「ずっと幸せにするよ」

「最後まで、何なんだよ・・・・・・。死亡フラグ回収されなかったじゃねぇか」

陰キャが嫉妬したところでどうにもならないから黙ってろ」

「某助、痛いところを突きやがって」

栄太は終始イライラしていた。

こうして、ドラゴンは人々を攻撃しなくなり、平和が訪れたとさ。

めでたしめでたし。帰るうちに、ああああとも、ペーコとプー、ヌーカとも別れて、二人きりになった。

「ところで、なんでドラゴンは気絶したんだろう?」

「鼻の穴に入っていたのがヌーカだからだよ。あまりの激臭に耐えられなかったんだろ」

「なるほどな」

二人は無事にドアを見つけた。

「上手いこと行ったもんだなぁ」

「栄太、それは小説だからだよ」

「メタ発言やめろって」

ドアをくぐり、部屋に帰った。

「いつもの部屋だな」

「お疲れさん」

誰かの声が急に聞こえた。

「え?」

「君たち、ご苦労だったよ」

「あ、あなたはまさかゲーテさん!?」

「そうだよ。元・武器屋の主人だったゲーテだよ」

なんと部屋の中にゲーテが入り込んでいた。

「お前のせいで大変だったんだぞ」

「ふはははは。なぜドアが異世界につながっていたか分かるか、お前たち?」

「冒険日和だからでしょ?」

「違う。私はある目的を持って異世界とこの部屋をつないだんだ。そうだな、ヒントをやろう。私はこの世界に何かをするためにやってきたんだ。それを果たすために、わざわざ異世界とこの世界をつなぎ、冒険意欲のありそうなお前さんに地図をこっそり持たせたわけだ。いいか。この世に意味の無いものなんて無い。全ては私の計算通りだったわけだ」

「な、なんだと・・・・・・!?」

「さらばだ」

ゲーテは部屋から去っていった。

2人は去っていくゲーテの背中を見つめた。

某助はその背中にある文字に気がついた。

「『AKB47命』って書いてある」

「なんだと・・・・・・」

「よく見ると、ゲーテ、ペンライト持ってない?」

「本当だ。ペンライト持ってる」

「「ライブ見に来ただけ・・・・・・??」」