北風が強く吹く夜。
俺は自販機の前に立った。
俺は悩んだ。
どの飲み物を買おうか。
今は冬。
寒い冬。
俺が買うのは「あったか~い」飲み物だ。
しかし、何を買おうか。
缶コーヒーがいいか。
缶コーヒーを飲んで、男らしく。
でも、明日朝早いんだよな。
カフェインは止めておいた方がいいか。
ほうじ茶がいいか。
一番無難な選択肢だと、俺は思う。
でも、つまらない。
男らしくないから却下。
コーンポタージュがいいか。
女々しいか。
でも、コーンは美味しいな。
とりあえず保留。
おしるこがいいか。
さらに女々しくなったな。
でも、俺おしるこ好きなんだよな。
これに決めた。
俺はおしるこを買った。
さて、あったか~いうちに、おしるこを飲もう。
と思った瞬間、見たいテレビがあったことに気がついた。
録画してない。
帰らねば。
俺は走った。
おしるこを片手に、温もりを感じながら。
しかし、あるとき、その温もりが無くなった。
あまりに焦りすぎて、おしるこを落としてしまったのだ。
そして、それを女子高校生たちに拾われてしまった。
「これ、落としましたよ」
つめた~い口調で言われてしまった。
「あ、はい、すみません、ありがとうございます・・・・・・」
俺は走った。
ここから逃げるように。
走り続けて、なんとか家に着いた。
見たいテレビはもう始まっていた。
テレビを見ながら、おしるこを飲んだ。
そして一言。
「ぬる~い」